溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
「強いのにいじめてるからカッコ悪い。強くて頭もいいのにカッコ悪い事してるから、カッコ悪すぎるんだ!って……。」
椋は思い出しながら、クククッと楽しそうに笑った。彼にとってこの過去はとても大切なのだと花霞に伝わってきた。
「バカみたいだろ?言ってる言葉もむちゃくちゃで、年下が言う負け惜しみだったかもしれない。けど、そいつは本気の表情で。………俺も、その時にハッとしたんだ。本当にカッコ悪いなって………。ヒーローもののアニメでも強い悪者もかっこよく見えるけど、本当はかっこよくないなって思ったんだ。単純だろ?」
それから、椋は本当に強くなりたいし、ヒーローになりたいと思ったと教えてくれた。そしたらその年下の友達に「警察官が1番かっこいいよ。」と、言われたというのだ。
「それからだよ。単純な少年が警察官を目指したのは。そいつがいなかったら、俺は警察になってなかった。」
「そうなんだ。………じゃあ、その人に感謝しなきゃね。」
「あぁ…………。そうだな。」
彼の昔話を初めて聞いた花霞は、とてもほのぼのとした気持ちになった。
椋は自分の事をあまり話そうとしないため、こうやって彼の事を知れたのが、花霞は嬉しかった。
「目がとろんとしてきたな。………眠くなってきたか?」
「うん………。」
「………はぁー………今の顔を見て、我慢できる俺もすごいよな。」
「ん………?」
彼の呟きは、うとうとしてしまった花霞の耳には届かなかった。椋は苦笑しながら、花霞の頬に唇を落とした。そして、「おやすみ。」と頭を撫でてくれたのだった。
日付が変わる前に寝てしまった花霞を見つめながら、椋は「誕生日おめでとう。」と、彼女に1番早くお祝いの言葉を届けた。