溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を



 花霞に尋ねられた言葉の意味がわからなかったのだろう。椋は、花霞の言葉の意味を探ろうと、彼女の顔を見つめた。
 花霞は涙を堪えながら、無理矢理笑うかのように口元を上げて、言葉を変えてもう1度、彼に尋ねた。


 「結婚指輪………見つけたから、まだ結婚しているって事で、いいんだよね?………あ、指輪がなくても大丈夫だってわかってたはずだけど………どうしても、不安で………。」


 花霞は自分でもどうしてあそこまで必死になってしまっていたのか。指輪がなくなっただけで危機感を感じてしまっていたのかはわからない。
 けれど、お揃いの指輪が大切な繋がりのように思ってしまったのだ。


 「花霞ちゃん………。」
 「私……玲に酷いこと言われて悲しくて切なくなった。けど、1番不安になって泣いてしまったのは指輪を失くした事だった…………。椋さんと一緒のこの指輪をなくしたくなかったの………。」

 
 我慢していた涙が、大粒になって瞳から次から次へと流れ出した。
 1度流れた涙は止めることは出来なかった。

 
 「大丈夫。指輪をなくしたぐらいで、君を手離したりはしない。」
 「……………椋さん………。」
 「そんな事で心配していたのか。雨に打たれてまで指輪を探してくれた気持ちは嬉しいけど、俺は心配しすぎてどうにかなりそうだったよ。電話が来て、君の涙声が聞こえたときは居てもたってもいられなかったんだ。…………指輪はなくしてもいい。一緒に探せばいい、だろ?」
 「…………っっ………。」


 涙と共に気持ちが溢れ、花霞は「よしよし」と頭を撫でる椋への愛しい想いが大きくなっていった。

 指輪を見つけたときの安心感と、彼のぬくもりを感じられる場所に居たいと思う幸福感。
 そして、彼の優しい言葉と想いが花霞の体にスッ入り込んでいく。
 あぁ………私はいつから彼に惹かれていたのだろうか。

 一緒に暮らし始めたから?
 優しくされたから?
 一緒にドレスとタキシードを着て、指輪を交換したから?
 それとも出会ったときからだろうか。


 そんな事はもうわかるはずもない。
 けれど、今わかる事はたった1つだった。



 「椋さん………好きです。………私、椋さんが好きで好きで………離れたくないんです。」


 花霞の口からは自然とその言葉が紡がれた

 今、花霞が心から想う椋への気持ちだった。




< 84 / 223 >

この作品をシェア

pagetop