溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を



 「ごめんなさい…………。」
 「花霞ちゃんはこの指輪を探してたんだろ?」
 「はい………。」
 「だったらいいんだよ。泥だらけになってまで探してくれたんだから。俺は嬉しいよ。」


 半乾きの髪を撫でながら椋は微笑むが、やはり表情は固かった。


 「花霞ちゃん。何があったのか、俺に話してくれる?」
 「…………うん。」





 花霞は、ぽつりぽつりと今日の仕事帰りの事から話を始めた。
 駅で元恋人である玲に話をかけられた事。そして、先ほどの公園で話をした事を椋に伝えた。
 彼は相槌をうちながら、花霞の話しをしっかりと聞いてくれた。その顔は、とても心配そうで、眉を下げて花霞を見つめていた。


 「どうして彼が私に会いに来たのかわからなくて………。理由を聞いたら、プレゼントしたものを返してほしいって言われて。でも、そのアクセサリーは全部、彼の家に置いてきたんだけど。私は持っていないのに………。」
 「そうか。そういう事だったんだね。………それを彼に伝えたら、怒られた?」
 「うん。それなら代わりに今つけている指輪をよこせって………それで取られそうになった時に、左手の薬指に指輪をしていたので、結婚したってわかってしまったみたいで。それで、私が浮気してたんだ、って言われて。指輪を取られてしまたの………。」
 「………浮気、ね………。」



 椋は低い声で小さく呟いた後、息を吐いた。
 花霞は話しをした事で玲との事を思い出して、泣きそうになってしまったけれど、必死に堪えていた。これで泣いてしまったら、また椋に心配をかけてしまうと思った。


 「それで、怒ってしまったみたいで………。指輪を投げられてしまって………。」
 「そうだったんだね。だから、雨の中を探していたんだ。」
 「でも、指輪を見つけたから……もう大丈夫ですよね?」
 「え………。」



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