溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
いい人の振りをして、何かを取ろうとしているのか。しかし、花霞は金目の物はほとんど持っていない。それとも、襲おうとしているのかとも思ったが、こんなみすぼらしい女を誰が襲おうとするだろうか。
そんな事を考えながらも、初めて会った人の家へ行く勇気を花霞は持ち合わせてはいなかった。元々、少し気弱な性格だ。自分でもそれはわかっている。花霞は恐る恐る男を見て、やっとの事で返事をした。
「お気持ちは嬉しいんですが……初めて会った方の自宅に行くのはちょっと………。」
「じゃあ、どうするんですか?」
「ゆ、友人のところへ行こうと思います。あの、心配してくださりありがとうございました。」
花霞は深々とお辞儀をして、立ち上がってその場から離れようとした。
目の前の男は優しい。その雰囲気に惑わされて、自分の話までしてしまった花霞は少し後悔しながら、早く彼から離れなければいけないと思った。
3年一緒に過ごした彼に、酷いことをされたばかりだと言うのに、また人を簡単に信用しようとしてしまった。
寂しさと孤独に負けて、甘えてしまいそうになってしまった。
自分の弱さが悔しくなり、花霞は勢いよく立ち上がった。
すると、ぐらりと視界が歪んだ。
あぁ、立ちくらみかな、と思ったけれどいつものそれとは違っていた。視界がブレたのと同時に吐き気と視界が暗くなったのだ。
私、倒れちゃう………。
そう思ったのと同時、花霞の体はそのまま倒れそうになった。体に力を入れる事が出来ず、ただ倒れるのを冷静に待つ自分がいるのを花霞は感じていた。
痛みに備えて、花霞は目を瞑った。
けれど、いくら待っても衝撃を感じることはなかったのだ。そのかわり感じたのは、温かい感触だった。