高遠くんの熱にうなされて



にこやかな笑顔をこれ以上拒むのは、私にはできなかった。


なにより、もしも自分が壊れそうになったとき、わたしには頼れる人なんていない。


最低だけど、その優しさに甘えてしまいたかった。保険がほしかった。


「───うん、ありがとう、韮崎くん。もしものことがあったら、頼らせてもらうね」


グラッと揺れたまま、落ちた。
自分のズルい方に、心が落ちてしまった。


私はこれから……韮崎くんを利用してしまうかもしれない。


そんな罪悪感は消えないけど、言ってしまった言葉を取り消そうとは思わなかった。


「うん、遠慮なく頼って」


「あの、でも……ほんとに大丈夫?彼女さんとかに申し訳ないような気がする……」


私にそんな気がなくても、韮崎くんの彼女さんはきっとモヤモヤするだろう。


なのに、自分でうなずいたとはいえ、こんな簡単に決めてしまっていいのだろうか。


「彼女なんていないよ。大丈夫。久住さんが心配することなんてなにもないから。だから、安心して」


< 33 / 60 >

この作品をシェア

pagetop