【短】Crazy For You
「どうした?」
って、さり気無さを強調するように、穏かな声で聞いてみたんだけど。
いきなり声を掛けられた水美は、驚いたのか、ほんの少しだけ間を置いてからゆっくりとオレの方を向いた。
「…何が?」
言葉は短いけれど、そこに不機嫌を装うものは何もなくて、ホッとする。
でも、寝転んだままの水美は目線だけをオレに向けている状態から動かずにいて。
いつまで経ってもゲームをするわけでも、どこかに行こうと声を掛けてくる気配もない。その瞳があまりにも透き通っているような気がして、思わず本を閉じてフローリングに膝をついた。