【短】Crazy For You
「…みなみ?」
ほんの少しの沈黙の後。
なるべく水美を驚かさないように、声を掛けた。
泣きそうだった水美も、今度はすぐにオレを見つめてくれて。
「…………ったから…」
掠れたように小さな声で、何かを呟かれた。
ちょっとだけ頬を染めて呟かれた言葉は、小さすぎてオレの耳まで届かなくて。
「…なに?」
オレは無意識の内に、水美の口元付近まで耳を傾けていた。
『そのお前の心を満たしているモノはなんなの?』
なんて、そんなドス黒い気持ちでいっぱいなのを、ねじ込んで。
「……瑛飛、さん…が…」
「…オレ?」
「………瑛飛さんが、夢の中で、『いかないで』って言ったの」
瞬間、水美の言っていることが上手く頭の中に入ってこなくて、瞬きをする。
そんなオレをマジマジと見つめながら、水美はオレの首に手を回してきた。
「『いかないで、いかないで・・・お願いだから・・・』って・・・。私はここにいるって手を握り返したのに、瑛飛さんは全然起きてくれなくて・・・瑛飛さんが誰にそんなこと思ってるのか気になって・・・・・・」
『私が、・・・もしいなくなっても・・・そう言ってくれるかな・・・って・・・』