【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「灰野くん」


ドキドキと騒がしい心臓が表に出ていそうな表情を無にして俺は顔を上げる。


……うわ、顔、赤。

つられるからまじでやめてそういうの。


「何」


できるだけ冷静に短い言葉を吐き出すと、藍田さんのにやけた口元は冷静に戻っていく。


俺は視線を机に下げて、パンを齧る。


「あの……このパン、ありがとう」


「うん」


「大好きで」


は!?と目を見開いた直後「このパン」と続いて、一気に落とされる。


「ならよかった」



ドクドク心臓が鳴る。


藍田さんの熱っぽい視線と、
生暖かいその他の視線がここに集まっている。


山本は今にも吹き出しそうになっていて。



……全部に耐えられない。



「早く席もどって食べなよ」


最後の一口を飲み込んで、席を立った。


無理。

俺、藍田さんだけは無理。



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