【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「藍田さん?」
灰野くんの声で現実に引き戻された。
「あ、はい」
「CDありがとう」
「うん。あ、あの。藤堂さん、早退するって言ってたから灰野くんから連絡してあげたほうがいいかも」
「あーそう」
「う、うん」
普通の会話のはずなのに、なんでこんなに威圧感があるんだろう。
唇を一文字に結んで、目線を下げる。
「ああそうだこれ。さっきの代わりのプリント」
ひらっと目の前で揺れる真っ新なそれを慌てて掴んだ。
「あっ、ありがとう」
普通の会話をしているはず……だよね?
今、灰野くんの目が怖い。どこを見ていても怖い。
刺すみたい。
なんで?
そんなにあたしのこと嫌いなの?
……ギスギスした居心地の悪い空気に、息が詰まりそう。
それでも灰野くんと喋りたいって思うあたしは、どうかしてる。