【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「え、ええと……昔のこと思い出してて……それより、手……っ」


ほんのり赤らんだ顔が月明かりに照らされている。

藍田さんは、少し目線を横にずらした。


その顔は……どうなの。


可愛い。藍田さんっぽい。


……めちゃくちゃ好き。



「……ごめん」


両手を離して、顔を背けながら一歩下がる。


藍田さんの小さな肩の感触が手のひらに残っていて、余計に……。


いや、待って。俺は藍田さんなんて、好きじゃない。



心臓が痛いほど動いている。


ドクンドクン、はぁ、息が苦しい。



絶対好きじゃない。


歩き始めた俺の少しあとを藍田さんが追う。



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