月夜に花が咲く頃に

海ですっかり遊び尽くした私たちは、宿に向かい料理を食べてまったり。


お風呂から上がって部屋に戻ってくれば、フカフカの布団が5人分敷かれていた。


「・・・・・・ねえ、ずっと思ってたんだけどさ、」


「何だ?」


「何で一部屋なの?」


翼がついに口にした言葉に私も頷く。


宿について通された部屋は一つ。


布団も一部屋に5つ。


つまり・・・・・・、男女、相部屋。


「おかしいでしょ!!!」


「えー、だって別々だとつまんねえじゃん」


「だってじゃないわよ!」


「はいはーい、まあ、そんな怒るなよ。もう変えられないんだしー」


翼の怒鳴り声を右から左に聞き流す光。


何を言ったところで現状は変わらないことを悟った私は、ギャーギャー言い合う二人を放っておいて、端っこの布団に寝転んだ。


うん、気持ちいい。


ゆっくりとまぶたを閉じる。


なんだかんだで、今日一日楽しかったな。


どっかのチャラ男にキスマ・・・・・・、痕付けられたり、見知らぬ男に追いかけられたりしたけど。


海で泳いだり、ビーチボールしたり。


砂浜に座って焼きそば食べたり。


初めてのことだらけで、ドキドキした。


思い出すと、くすぐったくて、顔がにやけてしまいそうだ。


こんなに楽しい夏は、初めてかもしれない。


「ほら、二人とも。そろそろ寝るよ」


翼と光の不満そうな声も、だんだん小さく、遠くなっていく。


騒がしいみんなの声が子守歌になっていって、心地よくて。


頭のあたりに、何か暖かな温もりを感じながら、それがなんなのかも分からないまま、私は静かに眠りについた。








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