偽装ウエディング~離婚前夜ですが、抱いて下さい。身ごもりましたが、この子は一人で育てます。~
ハイヤーに乗り込んで、汐留の自宅マンションに向かった。

私は彼がいつでも帰国できるように、週末は掃除に明け暮れていた。
「…相変わらず、キレイに片付いてますね…」

彼はリビングを見渡して、感心していた。

「此処は玲人さんの部屋ですから…」

「今は貴方の部屋でもありますよ…」

「待ってて下さい…今、夕食の支度をします」

私は彼をソファに座らせ、エプロンを身に着け、夕食の支度を始める。
支度と言っても、前日から作り置きしていたおかずがほとんど。
炊飯器のご飯が炊きあがれば、出来上がり。
玲人さんは帰国した際は、必ず私の手料理を食べた。

意地悪な板前の兄に料理を教わった私の手料理は今やプロ級。

「玲人さん、食事の用意が…!!?」
ダイニングテーブルに夕食の準備をして彼を呼びに行った。
玲人さんがソファに横になり、眉を顰め、しんどそうにしていた。

「玲人さん…大丈夫ですか?」

「少し横になれば…大丈夫だと思います…申し訳ありませんが…夕食は・・・」


「まずは熱を測りましょう…」

私は慌てて救急箱を取り出し、電子体温計を彼に渡した。

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