偽装ウエディング~離婚前夜ですが、抱いて下さい。身ごもりましたが、この子は一人で育てます。~
浮気の芽
「塩崎さん…風邪はもう大丈夫?」

「あ、はい…大丈夫です…戸川先輩」

戸川菖蒲(トカワアヤメ)彼女は秘書課の副室長。
今は会長秘書を務めている。
ショートカットが似合い、学生時代はソフトボール部に所属。
オリンピックメンバーに選ばれたほどの実力者らしい。
私達は、他の秘書さん達と社屋一階の複合施設のイタリアンレストランでランチ。
定期的な秘書同士の情報交換も兼ねたランチミーティング的なモノだった。

「ねぇ~塩崎さん…明日、ヒマ?」
私はスプーンの上でカルボナーラをくるくるとフォークで巻いて、口に運んでいると突然、戸川先輩が、問いかけて来た。

戸川先輩は二十九歳。三十歳までに結婚すると意気込み、最近、婚活と合コンに力を入れていた。
その類の話だろうか?と思いながらも、私は正直に返してしまった。 
「え、あ…はい」


「合コン…一人…用事で出れなくなって空きが一つが出来たの?塩崎さん…もしヒマなら、出てくれない?」
「合コンですか…」

人妻の私は言葉を濁す。

戸川さんは私が既婚者であるコトを知らない。

副室長の戸川さんにも世話になっているし、断るコトは出来なかった。

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