キミ、が欲しい



ガーン……見れなかった。
ハルが倒れたとこも知らないままで私……作り笑顔で写真撮ってた。



「だ、大丈夫だから。結城さんこの後借り物競走でしょ?頑張ってね」



「うん……」



「ほら、他の人も写真撮りたがってるよ?」



絶対嫌なくせに。
写真、断れば良かった。
こっち見ずに「行って?」とか無理しちゃって。
大好きなあの瞳、見れなかった。
もしかして拗ねてる…?



借り物競走の出場者集合のアナウンスが流れ、仕方なくその場を離れた。



「ごめんなさい、競技出るんで」と断りながら集合場所へと向かう。
サイドは三つ編みにして緩くアップにする。
自分のクラスのところに並んだ。



スタート位置に着いたら歓声が上がる。
勿論、A組も全力で応援してくれてるから。
借りる物は全て他のクラスから借りるというルールで、学年が違ってもいい。



“結城星那が一体何をどこに借りに行くのか”



そんなことに注目されてるとは露知らず。
スタートを切って台の上の箱の中から一枚紙を引く。
同じ走者はそれぞれに目的地へと散らばっていくも私はすぐに動けずにいた。



だって意味わかんないもん。
周りを見渡すと皆が何か言ってて一斉に手招きしてる。
え、何これ。
しまった、出遅れた。
ちょっと名指しだったから誰かわからず固まった。



でも大丈夫。
私には奥の手があるのさ、フフフ。
紙を握りしめて走り出した先。
見えてるのはただ1人。
3年生も2年生も通り過ぎて立ち止まったのは1年D組前。



「ハル…!」



最初から決めてたの。
キミ以外考えられないから。
ちょっとズルしちゃう私を許して。






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