キミ、が欲しい



必死になって辺りを探す彼の目を見た瞬間、私だけが止まってた。



時間も、まわりのガヤガヤした声もおそらく止まってた。
私だけが……ビビビときたの。



「ねぇ、あの人そのメガネ探してんじゃない?」



笑いながら麻衣子が耳打ちする。
ハッと我に返り、一歩二歩と前に進む。



「あの、これ……」



近くで見たら更にヤバかった。
背丈も少し見上げるほどで丁度いいし、とにかく瞳が凄く綺麗……



「ありがとうございます」と言ってかけたメガネ越しに目が合えば「うわっ…!」と後ずさりする。



「入学式の時の人…」



「いや、私、名前あるし」



すぐに目をそらしてオドオドしてる。
よく見たら顔真っ赤だ。
彼の後ろから友達らしき人達が声をかけてきた。



「桜庭また買えなかったの?」
「ウケるわ〜」



さくらば…?
彼の名字…?
近付いてきた友達2人が私を見てびっくりしてる。



「うわわ、え?結城星那さん、だよね?え、なに?お前話してたの?」



慌てふためく友達らを差し置いて、彼の前に立った。
麻衣子も梓もびっくりしてるに違いない。
今まで自分から動くなんてなかったから。



目の前に立たれて更にオドオドする仕草は可愛く思えた。



「桜庭……なに?」



「え?」



「下の名前」



ひどく動揺してることだけは伝わってくる。
答えにくそうにしてるから顔を覗き込んだ。



「は、はるひとっ!」



もう耳まで真っ赤。



「何組?」



「D組……」



「そっか、私はA組の結城星那」



「し、知ってます…」






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