キミ、が欲しい



新学期がスタートしてすぐに男子のみの水泳大会がある。
え?そんなの水泳部が有利じゃん、って思うけど。
毎年盛り上がる大会らしく、水泳部以外の奇跡のどんでん返しがあるとかないとか。




「絶対、見に行くね」



「う、うん…」



あれ?何か自信なさそう。
まさかのカナヅチ…とか?
カップルは盛り上がるイベントのひとつらしいんだけどな。
来て…ほしくないのかな。



そこへ、D組男子がハルを茶化しにやって来た。



「桜庭、400メートルリレーなんすよ。クジで当たっちゃって〜、オイ、練習しに行くぞ」



あ、連れてかれちゃった。
バイバーイ、と手を振りつつ。
種目は何かな?バタフライ?なんて軽く考えてた。



1人になった途端。



「俺の方も見に来てほしいな〜」と馴れ馴れしく肩を抱いて来た相手。
えっと、誰だっけ?
肩に乗っかった手を見て、無言で払う。



「やっぱツレないね〜そこがまた良い!」



「……誰?」



「もう…!サッカー部の後藤だよ!」



「あぁ…って、知ってますよ」



「アハハ!ウケる!その素っ気ないとこ良いわ〜」



この軽い感じ、ないわ〜。
用はないので踵を返す。
「ちょ、ちょちょい…!」とまた目の前に現れて道を遮るからちょっと迷惑。
しかも他の生徒にチラホラ見られてるし。
3年生が1年生の校舎にいること自体目立つから。



「最後の水泳大会、見に来てよ」



「え、何で私が…」



ガッ!と両手を前で握りしめられて「お願い!」って目を潤ませる。
しかも声デカイ……






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