キミ、が欲しい
一人ひとり選手紹介があってスタート台に乗る。
「6コース、1年D組、桜庭晴人」
返事をしてゴーグルをつける仕草。
誰より拍手が大きかったこと、きっと勘違いなんかじゃない。
スタート台に立って構える姿。
それだけで美しく見えた。
ヤバイ……全然目が離せない。
ホイッスルが鳴って一斉に飛び込む。
大歓声が会場を包み込み、まずはバタフライ……え、早い。
ターンして背泳ぎ……平泳ぎ……最後はクロール。
どれもめちゃくちゃ綺麗。
「桜庭くん、めっちゃ早くない?」
「え、何か格好良く見えるんですけど」
「競泳見てるみたい」
「何か桜庭くん応援しちゃってる」
周りからチラホラ聞こえてくる声。
右側から頬をツンツンされて見ると
「桜庭、これを機にモテ期入っちゃうかもよ?」と麻衣子が毒を吐く。
ノーリアクションで6コースに視線を戻した。
水泳部相手に接戦じゃん。
これが例のどんでん返しってやつなの?
見せてくれるの?ハル……
知らなかったよ。
ハルがこんなに隠れて努力してたってこと。
自信なんてひとつも見せてくれなかったくせに…こんな魅せ方ズルい。
最後までかなり食らいついてんじゃん。
水泳部には残念ながら負けちゃったのにもうヒーローなんだもん。
一瞬で皆の目を奪ってたよ?
プールから上がってからも歓声は続き、帽子とゴーグル取っただけで黄色い声援。
次の種目に出る出場メンバーが紹介され始めた。