華道家元の溺甘レッスン
5話

〇凡奈自室

凡奈(正木さん…いや、柾さんが家元だったなんて…。)
  (どうしよう、いままですごく失礼なことしてたな…。)
  (これからどうやって接したらいいの?
  今まで通りにはいかない…よね…。)

柾から来たライン(過去のもの)を見返す凡奈。
溜息をつき、柾の姿を思い浮かべる。

凡奈(これまで近づいた距離…なかったことになんてできないよ…。)

〇翌日・インスタレーションの現場

愛「だから!ここにアクリルを渡して造形をしたいんです!!
  ありきたりなインスタレーションなんて、私、やりませんから!!」

怒る愛に、困る凡奈。
クライアントの担当者も少し呆気に取られている。

凡奈「ですが、七岡先生、
  今回のリクエストは“日本の和”ですので、
  それに沿ったインスタレーションを…」
愛「あなたは花のことなんか全然わからないんだから、
 黙っててください!!」

凡奈(…これは当たられてる…気がする…。)
  (でも、仕事を投げ出すわけにはいかない、
  私の担当する仕事を、成功させたい!)

凡奈「七岡先生、クライアント様のご意向もありますので、
  今一度お考え直しいただけませんでしょうか?」
愛「これは私の作品です!
 嫌なら、あなたがいければいいじゃないですか。
 お家元にお稽古つけてもらってるんですよね?」

ぐっと言葉を飲み込む凡奈。

そうこうしているうちに現場での打ち合わせの時間がなくなってしまう。
クライアント側の担当者が愛によろしくお願いいたしますと言い、
愛は退席する。
その後、担当者と凡奈が二人になる。

担当者「望月さん、今回は難しそうですね。」
凡奈「申し訳ございません。
  なんとか調整して
  ご意向に沿った形に…」
担当者「次回の打ち合わせでまとまらなかった場合、
   おたくの水野さんに改めて調整いただくという形にさせていただきたいと
   考えております。」
凡奈「え…。」
担当者「あらかじめイメージのすり合わせをお願いしたいです。
   このままですと望月さんのご担当の継続は厳しいです。」

ショックを受ける凡奈。
半泣きになりながら帰途につく。
途中、スマホの通知。
見ると、柾からのライン。

柾『こんにちは。
  今度の土曜日、いけばなのレッスンいかがですか?』

涙がにじんでくる凡奈。
柾に返信をする。

凡奈『私なんかが柾さんのレッスンを受けていても
  いいんでしょうか?』

既読がつき、しばらく返信がない。

凡奈(ああ、へんなこと返信しちゃったな。
  柾さんにも呆れられちゃったかな…。)

すると、スマホが鳴る。
柾からの電話。
凡奈、一瞬ビックリして、すぐに出る。

凡奈「柾…さん、」
柾『凡奈さん、どうかしたんですか?』

凡奈、ぼろぼろ泣いてしまう。

凡奈「なんでも…なんでもありません、
  私が自分で解決しなきゃ…」
柾『…今どこにいますか?
 少し待っててください。』

電話が切れる。
顔を伏せて泣く凡奈。
道行く人が見ていくが、涙が止まらない。

すると、ふとハンカチで頬の涙を拭われる。
はっとして凡奈が顔を上げると、目の前には柾。

柾「大丈夫ですか?」
凡奈「柾さん…!」
柾「落ち着くまで一緒にいさせてください。
 少し座ってお話しましょう。」

近くにあったベンチに並んで腰かける二人。

凡奈「ご迷惑をおかけします。」
柾「迷惑だなんて。
 …なにかあったんですか?」
凡奈「いえ、仕事のこととか、
  いろいろ…。」

愛のことを思い出す凡奈。
担当を外されるかもしれないこと、
柾と親しげにしていたことで愛に仕事を邪魔されていると感じていることなど。

凡奈「でも、泣いたらなんだかスッキリしちゃいました!
  自分の仕事ですから、
  なんとか自分で切り抜けてみせます!」

笑顔を見せる凡奈。
そして、その凡奈を笑顔で見る柾。

はたと、凡奈が柾に尋ねる。

凡奈「あの、柾さん、
  私、今まで通りにしていてもいいですか…?」
柾「え?なにか変わったことがあったんですか?」
凡奈「はい…。
  私、本当に失礼なんですけど、
  柾さんが家元だなんて知らなくて…。」
柾「…。」
凡奈「今度会ったときにどうしたらいいんだろうって悩んでたんですけど、
  でも、実際会ったら
  またお恥ずかしいところ見せちゃってました。」

顔を見合わせて、一瞬真顔になるが、すぐに吹き出す二人。

凡奈「本当に、いつもみっともないところばっかりお見せして、
  呆れちゃいますよね…。」
柾「そうですね…、
 それについて僕もおかしいと思っているところがあるんですけど。」

凡奈、少しぎくりとして、
恐るおそる尋ねる。

凡奈「え…どんなことでしょう…?」
柾「僕、凡奈さんのことを可愛いと思っています。
 好きになってしまったかもしれません。」
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