間宮さんのニセ花嫁【完】
結婚へのステップ4

佐々本飛鳥は恋をした




私、間宮さんが好きだ。

ずっと濁していた気持ちに名前を付けた瞬間、とてつもない消失感に見舞われる。
この関係はいつか終わりを迎える。それでも彼のことを好きになってしまったからには辛い未来が待っている。

それでもこの人が不意に見せる曇りある表情の意図を知りたくなってしまった。


「おはようございます」

「おはよう、飛鳥さん」


年越しまであと数日、昨日仕事納めを無事終えた私は朝から桜さんと台所に立っていた。
朝の澄んだ空気が窓の隙間から入ってきて、もう今年も終わりなのかと胸を騒つかせる。


「そうだ、良かったら後で脱衣所の蛍光灯換えてもらえない? また放っておくと忘れちゃいそうで」

「分かりました」


桜さんに頼まれ、朝食を作り終わると換えの蛍光灯を持って家の脱衣所へと向かう。ここに来たばかりの時はあまりの家の広さに毎回迷子になってきたが、今ではそのような心配もない。
脱衣所へ向かう途中、起きたばかりであろう間宮さんがこちらへ向かって歩いているのが見えた。


「千景さんおはようございます」

「おはよ、飛鳥早起きだな」

「頑張ってみました!」


彼は優しい笑みを浮かべながら眠たげな目を擦る。また朝食でと別れると一人脱衣所へ向かった。
今思えば、朝一番に好きな人の顔が見られるというのはある意味得しているのかもしれない。


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