間宮さんのニセ花嫁【完】



「(間宮さん、前髪跳ねてたなぁ)」


可愛い、と愛しさを噛み締めながら脱衣所の扉の前に立つとガサゴソと中から物音が聞こえる。こんな時間に誰かお風呂に入っているんだろうか。もしかして梅子さん?
女所帯の間宮家では男性が間宮さんしかいないので特に気にせずその扉を開いた。

が、


「うわ、吃驚した!」

「……」


突然目の前に現れた男性の裸体に一瞬思考がフリーズする。そして次の瞬間に私は家中に響き渡るような悲鳴を上げていた。


「いやぁあぉあぁあぁあ!」

「っ、飛鳥! どうした!」

「千景さ、風呂場に知らない男の人が!」

「男?」


私の悲鳴を聞いて駆け付けてくれた間宮さんにへばり付くと脱衣所の方を指差す。彼は「まさか」と私の肩を抱き抱えながらゆっくりと部屋へと近付いていく。
すると扉のドアが開き、中から胸元がガッツリと開いた着物を着た男性が姿を現した。


< 176 / 309 >

この作品をシェア

pagetop