間宮さんのニセ花嫁【完】
連絡くれたら迎えに行ったのに、と部屋に入った私を見てパソコンを触っていた彼が手を止めてこちらを見た。
和室、和服にパソコンというミスマッチな状況なのにそれが間宮さんだと無駄にしっくりくるというか。
「すみません、お仕事中でしたか?」
「大丈夫だよ、何かあった?」
おいで、と自分が座っていた座布団を抜いて畳の上に引くとそれを手で叩く。彼の優しい声色に誘われるがまま隣に座るとぐっと距離を近付けられた。
「え、えっと……2月14日はなんの日かご存知でしょうか」
「2月14日……にぼし、とか?」
「凄いコアなところ行きますね違いますバレンタインデーです」
そう言うと彼は「あぁ、バレンタインデーな」と微笑んだ。なに、にぼしの日って。確かにそうだけど。絶対バレンタインだって分かってて言ったよね。
でもこうして間宮さんが私との会話で戯けてくれるの、初期の頃を考えるとめちゃくちゃ感慨深い……!
「今年のバレンタインデーは手作りにしようかと思うんですがもし何か食べたいものがあれば教えていただきたいなと」
「手作り? 会社へ持っていくのもか?」
「あ、会社のは市販ので」
間宮さんだけですよ、と告げると彼が短く声を吐いたのを見過ごさなかった。
「良かった、会社の奴らも手作りなのかと嫉妬するところだった」
「え、千景さんってヤキモチ妬くんですか?」
「俺をなんだと思ってるんだ?」