青い鏡
 Blackout 、なんていいフレーズで、いい響き。
 ああこのまま苦しまないで何もかも blackout すればいいのに。

「あいつ」が誰だか解らない。
 こんなにも嫌いで、嫌いで、憎くて憎くて仕方ないのに、そんなにも大嫌いな人が誰なのか、一人も思い浮かばない。
 こんなに嫌いな人、思い当たってもおかしくないはずなのに、何故だかその嫌いな人が全然、見当もつかない。

 夢を見た。あいつを追いかける夢。
 「あいつ」はまた青い。
 にんまり、笑って、私を馬鹿にする。
悔しくて、むきになって、追いかける。
 でも追いかければ追いかけるだけ遠ざかっていく。
 雲とか、二次とか、太陽とか、月とかを追いかける気分、だ。
 苦しくて苦しくてもう走れない、と立ち止まるとあいつも止まる。
「ここまでおいで」
 にんまり、また笑う。
 悔しくて、もう息も整って、また走り出す。追いかける、
 また苦しくて立ち止まる。
 ふっとあいつが消えた。
「どこ」
 にいるの、が続かない。
 はー、はー、と息がひたすら音を立てるだけ。
「たっち。」
 振り返ると、青い

ばちんっ。
 Blackout 。
 汗をびっしょりと掻いていた。ふうううう、と息を吐く。
 ああもう。だから嫌いだ、なんて。まだあいつが誰だかわかんないんだけど。
 何なんだろう本当に。
 そんなにも潜在的に嫌いな人がいたんだろうか。
 そりゃ、苦手な人はいるけど。
 だからって、「苦手=嫌い」ってわけじゃないし、本当に思いつかない。
 ……でも、嫌い。嫌い。嫌い。憎い。大嫌い。
 もう姿を現して、誰だか言いなよ。私、誰だかわかんないのに嫌いが溜まって、息が苦しい。嫌いなのが誰かわかれば、ちゃんと向き合うのに。プラスに傾ける努力をしようと思うのに。少しでも嫌いが減ればいいのに。
 こんなの、苦しい。

スマホから、LINEを立ち上げる。
 ここに入った人はみんな、「友だち」。それ以外は友だちじゃない。
  そんな訳のわからないルールがあって、私のLINEには、極端に「友だち」が少ない。ぽつぽつとクラスの女子と、たった一人のクラスの、多分クラスメイト全員と交換している男子。「友だち」だって。こんな機械の中でつながってるだけで。
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