青い鏡
 馬鹿にしてんの? 「友だち」じゃなくて、ただの「連絡先」でしょ?
 LINEなんかに交友関係管理されてたまるか。
 いや、なんか私もうイライラしてる。嫌いな人がわからないってだけなのに、もう。
 ああ、もう早く。早く、この意味のない嫌いのループを終わらせてよ。いやもう、でもほんとに「友だち」は意味わかんない。家族や恋人はどうなるんだろか。恋人がかわいそうなのは私だけだろか。
 Blackout 。blackout 。blackout 。
 ああもうなんかこれ、口癖になってる。LINE、何で立ち上げたんだっけ。ああ、嫌いな人探すためだ。
 やっぱり、思いつかない。ピンとも来ない。
 Blackout 。

 夢を見た。お城の中を歩く夢。
「あいつ」はいない。ただ独りぼっちで、歩くだけ。
 夢なのに、いやに扉が軋む。重々しく、ぎいいいいぃぃ、なんて。なんとなく、いろいろな扉を開けたり、閉めたりぎっ、ぎ、ぎぎぎいいいいいぃぃぃ、と扉を開けたら、また青いあいつがいた。
「……あぁあ」
 残念そうに、あいつがつぶやく。
「見つかっちゃった」
 あいつは、鏡の中にいる。大きな、装飾された鏡。一歩、近づくと、あいつも同じように一歩近づいてくる。
 なに?
「かくれんぼは、君の勝ち、だけど私の勝ちってことでいいよね」
 ふふっ、とあいつが笑う。
「だって、」
 急にあいつが大きい声を出した。びりびり、と鏡が震えた気がした。
「君は、私でしょ?」

目が覚めた。
 怖くて、飛び起きた。
「……え」
 あいつは、私なの? 私は、私が嫌いだったの? なんで? ああもう、こんな私、
『だいっきらい』

目が、覚めた。
夢になかで夢を見ていた。
 私が、私を、嫌い、だって。
 夢の中でのように焦ってはいなかった。
「……嫌い」
 それは、重くて重くて鉛のようで、私は起き上がるのが億劫になってしまった。
 大好きな人に大嫌いと言われた。
 自分が嫌いだった。
 どっちが、こんなにも泣きたい気持ちにさせるのだろう。
 私は、「あいつ」だ。
 あいつが泣きたくて泣きたくて仕方ないんだよって、私をむしばむ。
 自分のことが好きだった。ナルシストだろうが何だろうが、好きだった。
 好きでいなければいけないような気がしていた。
 私は、私が、嫌いだった。
 どうしようもできない。

 青い鏡の中で、薄橙色のあいつは、「好きだよ」って、私に微笑んだ。
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