新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~

 結愛さんはナイトテーブルに置きっぱなしのピザで視線が止まり、ギギギと音を立てそうな動きをして、こちらに顔を戻した。

「昨日、ものすっごく怖い夢を見ました。ピザに襲われて踏みつけられ、ってなにか、おかしかったですか」

「いえ。なにも。昨日は涼しかったので、ピザは無事でしょう。食べますか」

「え」

 心底嫌そうな顔をした結愛さんに吹き出した。

「冗談です。最後の食べかけが一枚あるだけですので、これは「ごめんなさい」しましょう」

「ピザも「ごめんなさい」と言えば許してもらえるでしょうか」

「ええ。きっと。これは母の受け売りです。どうしても食べられない時は「ごめんなさいしなさい」と」

 ハッと息を飲む彼女に「平気ですよ。母の話がつらいわけじゃない」と伝える。

「昨日は、ごめんなさい」


< 211 / 229 >

この作品をシェア

pagetop