新婚蜜愛~一途な外科医とお見合い結婚いたします~
「好意ある異性はどのような輩であろうと、世界中の人間が狙っていると勘違いするものです。あばたもえくぼと言うでしょう?」
「省吾さんは『あばた』ではなく間違いなく『えくぼ』です」
胸を張って言われるものだから、思わず吹き出した。
「有り難いですね。私も結愛さんは『えくぼ』ですよ」
意味深に微笑むと、慌てたような顔をして頬を赤らめる。
純粋で、真っ直ぐな彼女が愛おしい。
「さ、行きましょう。今日は気兼ねなく食べられるように、ブュッフェがおいしい店にしました」
「ブュッフェですか。食べ過ぎてしまいますね」
嬉しそうに言う彼女の前に、手を差し出す。
「お嬢様、お手を」
「えっと……」
もじもじする彼女に言葉を重ねた。
「腕を組むには、カジュアルな場所ですので。手を繋ぎたいのですが」
「あの、でしたら、その、恋人繋ぎを……してみたいのですが」
想像していなかった要望を受け、胸が鼓動を速める。
年甲斐もなく、彼女の言動に振り回されているが、嫌じゃない。
「途中でギブアップは無しですよ?」
彼女は頷いて、差し出した私の手の上に自分の手を重ねた。
その手を掴み、指と指の間に自分の指を絡める。
「わ……思っていた以上に恥ずかしいです」
「照れないでください。私にも結愛さんの照れがうつりそうです」
空いている方の手で口元を覆って視線だけ彼女に向けると、彼女はまじまじと私を見つめた。