腹黒王子の初恋
 もう一度ベンチに二人で座る。

 また無言…

「あ、あの…文月くん」
「はい…」
「私のこと嫌いじゃないですか…?」
「そんなわけないじゃないですか!すみません…。今日うまくできなくて…初めてのデートで緊張してるみたいです。」
「デート?」
「そこ?反応します?」

 ふふっとゆうきゅんが力なく笑った。

「でも、ずっと嫌われてるって心配でした。今日も会社でも避けられてるかなって。」

 よかったっと思わず笑顔がこぼれる。どうやら私は思ってたよりゆうきゅんに嫌われるのが怖かったみたい。

「はーっ。もう、そういうところですよ!」

 ゆうきゅんがまたため息をついて私を見る。今度は目を逸らさなかった。

「ん?」
「先輩、最近俺の前で雰囲気がやわらかくなったの気づいてます?̘̘̘̘̘̘前より目もあうし、話してくれる。笑顔もたまに見せてくれる。」

 何か怒られてる?

「ごめんなさい。確かに̘̘前よりそうかもしれないです。やめるようにします。」
「もー!違うって!」
「…?」

 目が点になる。また怒られた。もうよくわからない。私なんかがずうずうしくゆうきゅんと仲良くできないよね。

「だから、うれしいんです。もっともっと俺に心開いてください。」
「え?私なんかと仲良くしてくれますか。」
「その私なんかとかやめてください。俺が仲良くしたいって何回も言ってるじゃないですか。」
「へへっ。ありがとう。」
「あーもう!その笑い方かわいすぎるから!」

 また怒っているゆうきゅん。何だかよくわからないけどこのまま仲良くしてくれるらしい。3人目の友達ができたみたい。
< 34 / 103 >

この作品をシェア

pagetop