想いをのせて 【ママの手料理 番外編】
壱さんが仁さんの中に存在すると言っても、主人格は仁さんだし、仁さんが主人格の時の記憶は壱さんにはほとんど分からないから、いつも人格が切り替わる度に若干恐怖を感じていたこと。



そして、壱さんが仁さんと直接会話出来るのは夢の中のみだし、彼に会える時間も起きてから覚えていられる内容も限られているから、仁さんが自分の事を本当はどう思っているのか、本当に不安だったこと。




『あいつ優し過ぎて、俺の事貶さないから…内心俺をどう思ってるのか分かんなくて…。二重人格だから絶対後悔した事あるのに、俺に“何処にも行かないで”って言ってくるからっ…』



その優しさが、本当は凄く、苦しかった……っ、と、彼は私達に言いながら言葉を詰まらせていた。




彼の決心が本当に固いと分かった後、私達は必死に彼を止めた。



『消えちゃ駄目だ』



『何処にも行くな』



『壱さんの作ったタピオカ、また飲みたいの』



『仁はお前の事が好きなんだ、仁の為に居なくなるな』



『俺達は、家族だろ?』



沢山の言葉を投げ掛け、沢山彼を抱き締めて愛を表現し、あらゆる手段を使って沢山沢山彼を引き止めたのに。



『お前らには仁が居るだろ?仁とお前らが家族なら、俺とも家族だ。だから安心しろって。大丈夫だから』
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