晴れた日に降る雨のように
出かける前からの重苦しい気持ちが、この天気のせいで更に輪をかける。

大好きな曲も、お気に入りの写真も何もかも頭に入ってこない。

着ていた自分の黒いカーディガンの襟元を私は握りしめた後、諦めたようにイヤホンを耳から外した。

寂しさ、悲しさ、虚しさ。

そんな気持ちが心の中を占拠していくのを止める事はできなかった。

このすさんだ、ささくれた心を満たせるのは……。


「あき」

ぼんやりと視線をさまよわせていた私は、ため息混じりに呼ばれたその声に、心がざらりとした砂をぶちまけたように、ザワザワと音をたてる。

しかし、振り向かない訳にも行かず、私はその方向へと傘から視線を動かした。

「相変わらず目立つな。その傘」

ため息の原因が傘なのか、それとも私なのか……。

考えてもわかる訳もなく、私は曖昧な表情で視線を雨粒が落ちるアスファルトへ向けた。

「いいでしょ。目立って」

心にもない言葉が口からついて出て、自然と私の口からも小さく息が溢れる。

気まずくて、居心地の悪いこの空気に私は顔を隠すように傘を引き寄せた。

それと同じように、彼の表情も傘で見えない。
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