晴れた日に降る雨のように
素直に言葉を交わせない不器用な俺に、いつ秋穂が愛想をつかすのかそればかりが心配だった。

『女はきちんと言葉にしないとわからないぞ』
何度となく言われた友達の忠告が痛いほど身に染みる。

それに加えてお互いの仕事が忙しくなるにつれ、秋穂との距離が開いていくような気がした。

当たり前だが、全く言葉にしない俺に、秋穂はいつも言葉にしてくれていた。
それがなくなったのはいつの頃だろう?

だんだんと秋穂の言葉が素直じゃなく、俺に対する不満や不安があることもわかっていた。
それでも俺はまだ大丈夫と鷹をくくっていた。

しかし、明らかにできていく秋穂との距離が怖くなった。

きちんと修復したくて呼び出した秋穂の、カラフルな傘が雨の中くるくると回っている。

それだけで口元が緩むのに、こんなに秋穂のことが大切なのに……。

そのことを伝える。
それだけを考えていた。


目も合わない秋穂の傘が、ゆっくりと空を切って俺に当たる。
服の色が変わり、秋穂の瞳から涙が零れ落ちる。

「ゆう……」

またもや秋穂から先に、何かを言わせてしまいそうになる。
秋穂の言葉にかぶせるように俺は言葉を発した。

「好きだ」

俺はしっかりと秋穂を抱きしめて、絶対に離さない。
こんなにも好きになったのは秋穂だけだから。

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