晴れた日に降る雨のように
転ぶはずだった私は、すぐ上から降ってきた声に慌てて祐樹を見上げた。

すっぽりと抱きしめられるように支えられていた自分に、急激に体温が上昇して、顔に熱が集まる気がした。

「ご……ごめん。酔ってる……かも……」

それだけを言葉にした私に構うことなく、祐樹はあろうことが私の手を握ると、ため息交じりに言葉を発した。

「本当にお前って世話が焼けるな」

その言葉と裏腹な優しい瞳に涙が溢れそうになって、慌てて視線を逸らした。

「帰るぞ」

そのまま駅まで帰る道が、もっと続けばいいそう思った。

好きだな……やっぱり。

そんな事をいくら思っても仕方がない。

それでもこの手を私は離せない。

神様、どうか私にこの人を諦める力をください。

そんなくだらないことを思って、酔いのせいにして私はつないでいた手に力を込めた。
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