琥珀の中の一等星
かしまし女子トーク
「まぁ。子どもたちの前で本を読んだなんて、とっても楽しそう」
 おしゃべりの中で出した、ライラの「朗読をしたの」という話に、顔を輝かせたのはシャウラだった。
 週明け、放課後。今日は先生の手伝いも、合唱隊の活動もない。ついでに早く帰る用事もないので、友達たちと少しおしゃべりをして帰ることにしたのだ。
 シャウラは普段穏やかな表情をしていることが多いのに、顔があまり見られないほどに明るくなっている。手を胸の前で組んで、わくわくした様子で詳しく聞かせてと言ってくる。
「そう? 私は難しい本は苦手だからあんまり……」
 行儀悪く机に腰かけて足をぷらぷらさせながら、ミアは『それほど魅力を感じない』という声で言ったけれど、シャウラは、にこっと笑った。
「難しい本はそうかもしれないけど。絵本は楽しいわよ」
「そりゃ、子どもの頃は好きだったけど」
 子どもの頃。今回ライラがしたように、絵本を読んでもらった経験は誰しもあるだろう。ミアは単純にそう答えた。その返事にシャウラは手ごたえを感じたらしい。
「大きくなったって、大人になったって、読んでいいのよ。子ども向けだからって、手を抜いて書いているわけじゃないの。むしろ、子どもに伝わるように易(やさ)しく書くためにはね、大人が読んだって楽しいと思えるものじゃないといけないの……」
 本好きシャウラの『絵本講座』がはじまってしまった。
 ミアはあまり興味はない、という顔をしていたが、一応それを聞いている。女の子同士のマナー。ひとのおしゃべりをさえぎることはしないのだ。まぁ、シャウラのターンが終わったあとに、自分の好きなことを一気にしゃべりだすのだろうけど。
 絵本について解説するシャウラは、「いつか本なんかを自分で書けたらいいなぁ」と言っている。実際になにか書いてみたりしているようで、ライラにたまに見せてくれるのだった。
 エッセイだったり、短いがお話だったりする、それ。ミアは一応目を通しはするものの、「へぇ、すごいねぇ」くらいにしか言わないので、見せてもらうのはともかく、その詳しい話をするのはもっぱらライラとシャウラの二人で、だった。
 ライラは『物語を書く』ということにはあまり興味は覚えない。書くよりは読むほうが楽しいと思えるのである。でも、日記を書くのは昔からの習慣なのであって。『頭の中にあることを、書きつけておく』という点については、わずかにではあろうが、シャウラのしていることと重なると思う。
< 36 / 74 >

この作品をシェア

pagetop