身代わり王女の禁断の恋
私はクラウスに案内されて、王女殿下の部屋ではない別の部屋に入った。

「あ、バイオリン!」

私は、愛用のバイオリンが机の上に置かれてるのを見つけて駆け寄った。

「では、今日はこちらでお過ごしください
ませ。」

クラウスが頭を下げて部屋を出ようとするので、私は慌てて呼び止めた。

「クラウス!」

「はい。」

「あの、ありがとう。」

私がお礼を言うと、クラウスは驚いたように目を見張った。

「なぜ、『ありがとう』なんです?
私は、酷いことしかしてないと
思いますが…」

「だって、私を出してくれたじゃない。
酷いこともされたかもしれないけど、
それでも私は、やっぱり、『ありがとう』
って言いたいの。
クラウスは、ダンスも教えてくれたし、
私のためにいろいろ身の回りのことも
してくれたでしょ?
だから、クラウス、ありがとう。」

クラウスは一瞬、困ったような表情を浮かべて、そのまま黙って一礼して退室していった。
< 114 / 155 >

この作品をシェア

pagetop