身代わり王女の禁断の恋
翌日の午後、私は部屋からバイオリンを持ち出した。

美しい庭園を抜けて、そのまま昨日の森を目指す。

私は、森の中の広場にある切り株の上でバイオリンのケースを開き、準備をする。

肩当てを付け、緩めてある弓を張り、松脂を擦り付ける。

調弦をし、私は思うままに音を奏でる。

まずは先日から五線に書き留めている曲。

小鳥のさえずりに乗せて演奏する。

私ひとりなのに、なんだかピッコロやフルートと合奏している気分。

私は時間も忘れて、日が傾き始めるまでバイオリンを弾いていた。

広場がすっかり日陰になっているのに気づいた私は、慌ててバイオリンを片付けて部屋に戻る。


ほっ
よかった。

誰に見咎められることもなく部屋に戻ることができて、私はようやく肩の力を抜くことができた。

クラウスにでも見つかったら、もう出してもらえなくなるかもしれない。

ダンスを踊ってるクラウスは、本当に素敵なんだけど、どうして普段の彼はあんなに厳しいのかしら。

もっと笑えば、少しは親しみも湧くと思うのに。
< 23 / 155 >

この作品をシェア

pagetop