身代わり王女の禁断の恋
「さ、王女殿下もこちらへ。」

なんで?

「違うって言ってるでしょ?
私は王女殿下じゃないわ。
クリスティアーネよ!」

けれど、兵士たちに背中を押されて連れていかれる。

「離しなさい!
それが仮にも王女に対する振る舞い?
私が王女じゃないなら、連れて行く必要は
ないし、王女ならその態度は無礼だわ。」

私がそう言うと、中佐が目配せをして兵士を下がらせ、中佐自身は片膝をつき、手を胸に当てて言った。

「これは私の部下が無礼を働き、申し訳
ございません。
あなた様が仮に王女殿下であっても
なくても、このような季節外れの観光地に
うら若い乙女がひとりきりで残されます
のは、大変危のうございます。
我らと共に都へお戻りくださいませ。」

中佐の口にしたことはもっともで、項垂れた私は自ら部屋を出て、馬車に乗り込んだ。

アルフの馬車には、見張りの兵士が同乗し、私の馬車には中佐が同乗した。


馬車は走り続け、夕食の時に見えていた半月が、山の向こうに隠れる頃に、ようやく王宮に到着した。

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