※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


気づけば、先に教室に戻ったクラスメイトたちもみな、教室に入ることなく入り口や窓に群がっている。


「何事?」

「大瀧がエンプロイドにつっかかってるぽい」


舞香とリカの会話に、背筋が凍りつくような感覚を覚えた。


慌てて舞香の隣に出て教室の様子をのぞき見れば、クラスの中でも一番の巨体で問題児である大瀧が黒板に手をつき、ユキを黒板と自分との間に囲んで恐喝していた。


「だから、自分が万引きしましたって一言言ってくれればいいって言ってんだろ! 次バレたら、俺退学だって言われてるんだよ」


自分が批難される可能性なんて一ミリも考えていないのか、教室の外まで響くような大声を張りあげ、ユキに迫る大瀧。


けれど、そんな怒声に怯むことなく、ユキは冷えきった眼差しで大瀧を見返した。


「それはできない」

「はあ?」

「ちゃんと卒業したいから」


凜としたユキの声は、ボリュームはそれほど出ていないはずなのに、ぶれることなくここまで聞こえてくる。

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