※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


そんなやりとりを傍観していたリカと舞香が、隣でくすくす嘲るように耳打ちし合う。


「大瀧、自分の万引きの濡れ衣着せようとしてるのかあ。相変わらず、やることえっぐいね」

「感情あるみたいなこと言っちゃって。エンプロイドは黙って言うこと聞いてればいいのにね」


一方教室では、一向に態度を崩さないユキにイライラが頂点に達したのか、大瀧が激昂していっそう声を荒らげた。


「エンプロイドは、人間に従順な奴隷なんだよ……!」


そして毅然としたままのユキの胸ぐらを掴む。

あまりに容易に。そこに尊厳などないように。


そんな、目の前で繰り広げられる一連の流れを、私は呆然と立ち尽くして見つめていた。


私たちとエンプロイド――いったいなにが違うのだろう。


自分の気持ちを隠すことなく相手に伝えることができて、人のいいところを見つけるのが得意で、いつだって笑っていて。

どこまでもユキには敵わないところばかりなのに。


どうしてエンプロイドだからという理由だけで理不尽に傷つけられなければいけないのだろう。

どうしてエンプロイド相手ならば傷つけてもいいとみんな思っているのだろう。


まわりがそうだからという理由で、みんな考えることをやめている。


大多数が正義で、それに外れる人や考え方はすべて悪なのだろうか。


これじゃあ、意思と言葉を持って生まれてきたのに、人の目ばかり気にして自分で考え発信することをやめた人間の方が、よっぽど空っぽなアンドロイドみたいだ。

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