※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
……ユキは、どうして私を好きでいるんだろう。
私は、ユキをたった一度助けただけ。
それにあの時は、ユキがエンプロイドとは知らなかった。
エンプロイドだと知っていたら、私はあの時、同じことができていただろうか――。
すると、その時、背後で渡り廊下と校舎を遮るドアが開く音が聞こえた。そして。
「はのんちゃん、見つけた」
続いてふわりと落ちてきたユキの声に、私はいっそう強く額を膝に押し当てる。
「……なんで見つけちゃうのよ」
北風に滲んだのは、子どもみたいにぶっきらぼうな拗ねた声だった。
見つけられたくなかった。
……だけど、心のどこかで見つけてほしいと願う自分もいた。
胸に生まれるのは矛盾ばかりで、自分の本心がどこにあるのか迷子だ。
「はのんちゃんのことなら多分どこにいても見つけ出せる気がする。これが、好きってパワーなのかな」
どんな攻撃をも包み込んでしまうような柔らかさで言いながら、ユキが私の前にしゃがみ込んだ気配があった。