僕の庭
僕の十代は、戦火の中にあった。

父も、年の離れた兄達も次々と戦地へ赴いていった。
一人、また一人と死地へ向かう家族を、僕と母は歯を食いしばって見送った。


また家族みんなで暮らす日が来るさ。

父と過ごす最後の夜、家族全員の顔を見渡してそう言った父は、笑顔だった。
みんなの胸中に溢れる不安を拭おうとした、優しさだったのだろうと思う。

まだ幼いばかりだった僕は、その言葉を胸の奥深くに刻み込んだ。

またいつか、みんなで暮らせるんだ。
また、いつか。
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