僕の庭
私が年始の挨拶に浜田老人の家に行くと、4枚の絵に囲まれるようにして、彼は亡くなっていた。

幸せそうにほほ笑んでいた。

彼は、死期を悟っていたのか、茶箪笥の中に遺書をしまっていた。

遺書には、葬儀は私の采配でひっそりと行う事と、彼の絵画の全てを私に譲渡する旨が書かれていた。
それと、庭に植えたびわの木をそのままにする事。

私は全ての手続きを済ませ、主のいなくなった小さな家の縁側に4枚の絵を並べた。
彼が亡くなった時に眺めていたのであろう絵。

花保理。雪の中で綺麗な笑顔を見せる女性の絵の裏に、几帳面な小さな字でそう書かれていた。

私は花保理さんを覚えている。
体の細い、少女のような女性だった。
無骨な浜田さんの陰に寄り添うようにしていた。
若くして亡くなった彼女、浜田さんは彼女をずっと愛していたのだろう。

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