僕の庭
「ありがとう、耕介さん」


佳穂はそう言って帰っていった。




あれから冬の季節が到来した。

街はすでにクリスマスソングが溢れているらしい。
来年の個展の打ち合わせに来た真崎さんが教えてくれた。
今年のクリスマスは、初孫にサンタクロースとしてプレゼントを贈るのが楽しみなんですよ、と彼は少し楽しそうに言った。
朝起きて包みを見つけた時の子どもの笑顔が真崎さんへのプレゼントですね、と言うと、


『やあ、先生も素敵な事をおっしゃいますね。私へのプレゼントか、そうだ、その通りですよ』


と嬉しそうに何度もプレゼントと繰り返した。


クリスマスなんて僕にはなんの意味もないけれど、僕もなんとなく楽しくなって、彼のにこにこした様子を眺めた。

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