パーフェクトラブ〜激愛されて困ってます〜
今日はちょっと風邪ぎみ。水曜日ぐらいから体調があまりよくない。お客さまに風邪がうつってしまってはいけないので、マスクをしている。仕事は、休むことが出来ないので、いつも通りにこなす。

それに今日は、金曜日だ。

レイトショーには、あの彼が来るはず……そう思うだけで、気分が良くなる。怠いけど、テンションが上がる。

そろそろレイトショーの受付の時間だ。今日も楽しみだなぁ。

「小橋さん」

「はい」

「今日のレイトショーの受付は、私が代わります」

「えっ?でもレイトショーのシフトは私が受付ですよね?」

1日の作業の割り当てには、確かに私が受付だ。

「そうなんですけど、小橋さん、風邪ひいているじゃないですか?それなら、受付じゃなくて
他の作業のほうが、お客さまの為にもいいと思いますよ」

「……そうですよね。わかりました。私が林さんの作業をやりますね」

「よろしくお願いします」

「はい」

林さんは私より10歳も若い。本当だったら、いつも林さんに受付をやって貰ったほうがいいのかもしれない。

はぁ〜っ。

彼に会えたらもっと元気が出るって思ったのに……残念だな。

私は館内の掃除をするため、掃除道具を取りに行き、上映が終わった場所から掃除を始めた。

ゴミを拾い、忘れ物がないか確認した。汚れている所を綺麗にして、次の場所へ向かった。

それの繰り返しだ。

ひと通り終わり、掃除道具を片付けた。

あぁ〜。彼に会いたかったなぁ。彼は今日も来ているのだろうか?

今、上映中なのは3か所だ。その中に、彼はいるのだろうか?

私は、館内をゆっくり歩いていた。

上映が終わったみたいだ。お客さまをお見送りするために壁側に避けた。

「ありがとうございました」

お辞儀をしてお客さまを送り出した。
お客さまがどっと押し寄せてくるため、何度もお辞儀をする。

風邪が酷くなってきたのか、喉が掠れてきた。

ちょっと辛い。

やっとお客さまが少なくなってきた。

「ありがとうございました」

また、お辞儀をした。

「これ、どうぞ」

驚いて顔を上げると、

「僕も仕事で喉が痛くなるのでいつも持ち歩いているから、どうぞ」

彼はのど飴を、私に差し出した。

「ありがとうございます。いただきます」

私は、のど飴を受け取った。

「今日は、受付にいなかったのでお休みかと思いました」

「えっ?」

予想しない言葉を言われ、変な声を出してしまった。はっ、恥ずかしい。きっと顔が真っ赤だ。

「ははっ」

可愛い〜。笑った顔が可愛くて、思わず、叫びそうになってしまった。母性本能をくすぐる。
キュンとしてしまった。頭を撫で撫でして、抱きしめたくなってしまう。

「あっ、ごめんなさい。笑ってしまって……」

「いいえ、気にしないでください」

私は笑顔で言った。

だって、彼の新しい部分を見れたから。

「来週もいますか?」

「わ、私ですか?」

「そう、小橋さん」

「えっ?何で私の名前……」

「ほら…」

彼は、私の名前のプレートを指で差した。

「あっ、」

またもやってしまった。

手をおでこに当てて、あちゃ〜っていう動作をしたら、

「ははっ、小橋さんっておもしろいですね」

なんて言われてしまった。

やっぱり笑うと、可愛い〜。またまた、見惚れてしまった。

「僕は、元谷 雷斗(もとや らいと)と言います。よろしく」

彼は、私に握手を求めた。

私に優しく接してくれる人なんて今までいなかった。恥ずかしながらも私は、彼の握手に答えた。

「小橋 美結雨です」

「仕事中、話しかけてすいません。風邪、早く治るといいですね」

元谷さんは、優しく微笑んだ。

「はい、ありがとうございます。また、来週お待ちしております」

深くお辞儀をした私を見て、元谷さんは、帰って行った。

私は、今の出来事が夢ではないのかと思うくらい、突然だった。

でも、手のひらには、元谷さんからもらったのど飴があった。
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