キンダーガーテン五      ~ここが居場所~
「ただいま。
奥さん、娘が来たよ。」

明るい園長先生の挨拶に

副園長先生が顔を覗かせる。

「あら、唯ちゃん。
いらっしゃい。
上がって、上がって。」

ホンの数分前まで泣いていたから

見たら直ぐに気づくはずなのに、何も聞かれなかった。

「唯ちゃん、ご飯は食べた?」

「はい。
ご飯もお風呂も済ませてます。」

「だったら、今日は何も考えずに寝たら良いよ。
悠人には、ここにいることを伝えない方が良いんでしょ?」

さすが園長先生。

唯が先生にナイショで、出てきたことをちゃんと分かってる。

コクンと頷くと

「そう言うことなので。
奥さん、悠人が連絡してきてもナイショでお願いねっ!
後、明日は幼稚園休もう。」って。

さすがにクラス担任がいないのは、ひよこ組の子供に申し訳ないから

辞退させてもらうと

「ダ~メ!
唯ちゃんを泣かせる奴は、懲らしめないと。
先生達には、俺の所にいるって言っとくから心配ないよ。
明日は、主任先生にお願いしよう。」って。

ひよこ組さんの事を思うと、お休みなんてあり得ないけど………。

明日また、あの冷たい目をされたらって思うと…………

先生に会う勇気が持てないので、助かる。

「……………すみません。
お願いします……………。」

「ほらほら、そんな暗い声を出さないの。
楽しい夢を見ないと、お肌に悪いわよ。
明日は一緒に、ケーキを焼こうね。」と副園長先生に励まされて

寝室に案内された。

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