キンダーガーテン五      ~ここが居場所~
コンコン。

開け放たれたドアをノックして

「お疲れ様。」と言って、先生が入って来た。

「先生~。」

何が悲しくて、嫌なのかも分からないけど……

モヤモヤする。

「帰ろっかぁ。」

唯を抱っこして

「洋ちゃん、サンキュウ」と挨拶して

…………車に向かった。





指定席の助手席に腰を下ろすと

急に涙が溢れた。

先生は、運転席に座ると……

頭を撫でてから、話し始めた。

「ごめん。
お父さんが悩んでる事…………聞いてたんだ。
尋ちゃんも知ってる。
……………………………。
彼女………
お父さんと一緒になりたいって言ったらしい。
お父さんは………
子供の事を思うと『お父さんのいない子として育てるよりも』って思うけど……。
唯達の事を思うと
………踏み込めないって………。
お父さん、唯達をこれ以上苦しめたくないって悩んでた。
…………………。
それを聞いて
和君は、尋ちゃんに事実を告げるって………。
告げて、自分が家族として支えるってお父さんに答えた。
俺も…………って思ったけど……。
俺がグズグズしてる間に、唯ちゃんの耳に入っちゃった。
だから……………ごめん。
家族になりきってないけど……。
お父さん、お母さんの変わりにはなれないけど。
俺と唯が家族だから。
悲しいかもしれないけど……淋しくないよう支えるから。
俺がいるって………思い出して。
それから…………もう一つ。
お母さんも………一緒になりたいって聞いたんだ。
新しい人生を考えてるみたい…………。
ショックを受けてる時に………ごめんね。
隠せるなら、結婚するまで黙っておきたかったんだけど……
無理そうだから。
だったら、俺のいる時にって思って………。
ショックだよね?
……………………ごめんね。」

………………そっかぁ。

お父さんとお母さん…………

ホントに、新しい人生を歩むんだ。

祝福しないといけないのに…………。
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