キンダーガーテン五      ~ここが居場所~
焦ってバスを路肩に停めると

降りて、唯の所に来てくれる。

「疲れた?
どこか痛い??
もしかして、俺の運転が乱暴だった??」

そんな事あるわけないのに、心配する先生。

違うよ。

嬉しいんだよ。

そう伝えたいのに、口を開こうとすると涙が止まらなくなって

大丈夫だと伝える事が出来ない。

「唯~
唯ちゃ~ん。
ホントにどこも痛くない??」

首を縦に振る唯にホッとしながら

「大丈夫なら…………
もうちょっと我慢してもらえない?
バスだと抱っこもキスも出来ないから………。
さすがにこの大きな窓でやったら
園長に大目玉くらうから……… 
ねっ!」って。

コクンと頷くと安心して運転席に戻る。

「出すよ?
なるべく早く帰って、ゆっくりしよう。」

多分先生は、唯が疲れたと思ってるんだと思う。

その証拠に………

「今夜は、おかず………買って帰ろうね。」って言ってるから。

優しい先生。

でも………違うんだよ~

唯は嬉しくて涙が出たの。

先生と過ごすようになって

さっきみたいに、彼女として誉めてもらうことはいっぱいあるけど。

今日この遠足で…………

一人の先生として。

先生に誉めてもらえた事は…………

何よりも価値があることなんだよ。

この2年。

唯がずっと心に残っていた後悔。

それが、先生の言葉で………

報われたんだよ。

先生………………ありがとう。

やっと、前に進めるよ。

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