【全巻完結】愛は惜しみなく与う①
だからあたしは、母上の精神安定剤になった。
鈴として、側にいるというだけで、母上は元気になり仕事もできた


ほんと皮肉


あたしが死んだことになってるのに、母上は一度も鈴になったあたしに、杏の話はしなかった


たったの一度も



やば…思い出したら食欲失せてきた


「ほんま、ゲーでそう」


あ、やば!咄嗟に口を押さえるが心の声が漏れてしまっていた
志木も少し目を見開き焦る


母上はあたしの言葉遣いを聞いて、怒鳴ってきた


「どうしてそんなお下品な言葉を使ったの!!!誰に教わったの!!!」


はぁ…こういう時だけ、放置されててよかったと思う。
母上は鈴の礼儀や作法に厳しく、間違えたりするといつも怒鳴っていた。

あたしは何しても興味さえなかったのか、何も言われなかった


それが少しかわいそうと思っていたけど、鈴は綺麗に礼儀も作法も覚えていた


鈴は関西弁を話さへん
母上も

標準語を話すようにずっと教えられてたらしい


「蘭様…お許しください。杏様は急遽帰ってこられたので疲れが溜まっておられます」


志木が母上にフォローを入れてくれた
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