【全巻完結】愛は惜しみなく与う①
救急車も呼ばれたくないって、まさか犯罪者!?
足元もおぼつかないような男は、再びその場にしゃがみ込んでしまった。
そして何やらゴソゴソと服を触っている。
えっと?あたしほんまに何もせんでええの?
めっちゃ血だらけやけど…大丈夫なんかな
「なぁ」
「はい!!」
突然声をかけられてビックリ。なんやねん。もうええって言ったやん
「携帯…無くしたから、貸してくれ」
…は?ボロボロで携帯もなくて、この人ほんまにここで倒れたままになってしまうやん
携帯を貸すために、男の方へ歩こうとした時声が聞こえた
『どこ行きやがった?』
『頭バットだぞ?それに足も!』
『そんな遠くには行けないはずだ』
『探せ!!!』
物騒な会話が隣の路地だろうか?聞こえてきた
頭バット?それってこの人??
男にも声が聞こえたのか、チッと舌打ちをして、ゆっくりと身体を起こした。
「なぁ、待ってえな!あんた何処行くつもり?フラフラやん。血止まってへんで」
「お前まじで、どっか行け。危ないから」
いやいや、危ないのはあんたやろ
頭を抑えて立ち上がった男は、またフラっとぐらついて、その場に倒れてしまった。