5分以内で読めるショート・ホラー集
聞いたことはあった。

生前の記憶をもつ子供たち、という特集をかつて、オカルト番組でも見た。

子供たちの言葉を頼りに調べると、彼らの言うような人生を送り、死んだ人間が遠い国で実際に見つかったりもしていた。

俺にはそのテレビ番組にしたって、目の前の少年、リクの発言にしたって、どこまでが本当の話かなど、わからない。

ただ、リクの話し方や表情を見る限り、ふざけているようにもまた、見えない。真剣な眼差しである。

「この記憶、どうしようかなって悩んでるんだ。あんまりそんな話ばかりしてると、変なやつだって思われそうだし。
死んだときのこともね、はっきり覚えているよ。ぼくはね、殺されたんだ」
「殺された?」
「うん。生まれる前のぼくもまだ子どもで、子どものまま死んだんだ。ぼくを殺したその大人は嫌がるぼくを、無理矢理引っ張ってね。
嫌だ嫌だって言ってるのに、引きちぎれそうなくらい引っ張って、血が出てもそんなことお構いなしに引っ張ってさ、
そして寒い部屋の中に、裸のまま閉じ込めたんだ。その寒さに耐えられなくなって、前のぼくは死んじゃったの」

リクの唇が、思い出すのもおぞましいのか、微かに震えていた。

もしそれが本当なら、残酷な話である。信じがたい行いだが、広いこの世界には、そんな輩もいるのだろう。

「どうして、こんな嫌な記憶がのこってしまったんだろう。
だいたい、ぼくはどうして生まれ変わったんだろう、なんてことでも悩んじゃってさ」
「寒くて苦しかったんだろ。その辛い思い出から解き放たれるために、生まれ変わったんじゃないか。
いまの家はどうだ? 暖かくはないか?」
「あったかいよ、家の中も、お父さんもお母さんも。おじさん、その考え方いいね、ありがとう」

リクはにっこりと笑ってこちらを見た。少年らしい、純朴な笑顔だ。

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