5分以内で読めるショート・ホラー集
コールセンターへと電話をすると、親身になって話を聞いてくれた。

聞いた上で、ハラスメントの酷さを上層部にわかってもらうのが一番だろう、と答えてくれた。
危うい手段ではあるが、盗聴なり盗撮なりで証拠を掴んでおくのもいいのでは、とアドバイスもくれた。

だから、私はカメラを仕込んだ。

仕込んだその日、さっそく上司は体を触ってきた。胸も揉んできた。
抵抗もしたが「こいつの蛮行をカメラに収めなきゃ」という気持ちが、自らに隙も生んでしまったのか。

「なんか、今日はあんまり、嫌がってないね」
などと笑みを浮かべながら、上司は調子に乗り始めた。

下半身に手を突っ込みながら、服を脱がそうとし出した。
必死に抵抗しても、火がついた彼は暴走をやめなかった。
床に押さえつけ、しまいには腹を殴ったり髪の毛を引っ張ったりして、私の体を傷つけた。
殴られるのが怖くなり、なすがまま、なるがまま、私は性的暴行を受けた。

酷いやつだとはわかっていたが、ここまでするとは思わなかった。

「じゃ、また明日な」
と吐いて上司は会社を後にした。
悲しくて悔しくて、なんだか情けなくもなって私は泣きながら帰路を辿った。
でも一縷の望みもある。
しっかりと、カメラには捕らえたのだ。

人に見られるのは酷な「証拠映像」ではあるが、上層部には確認してもらいたい。
そうなれば、さすがに彼は会社から消え去るだろう。

暴行を受けたことを公にはされたくないので、警察に訴えようとは考えていなかった。
とはいえ、あいつの弱みを、私はしっかりと握ったのだ。

ただ「証拠」を手にしたとはいえ、ひとりで立ち向かうのは怖かった。
なので私はお悩みコールセンターへと再び、電話した。
事態の深刻さを知り、直接お会いしてお話しましょう、という流れになった。

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