幻想ウエディング~人魚姫には王子様の甘いキスを~
桐生家
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彼のポルシェで向かった先は祖父が会長を務める大手ゼネコン「桐生建設」本社ビル。

彼の父親は大手アパレルブランド『ブラックベリー』の代表取締役だと訊かれた。
心の片隅では御曹司だと思いながらも、彼の口から明かされた素性に戸惑うばかり。

「本当に私でいいの?」

戸籍も学歴もないヘルス嬢の私が御曹司の彼と偽装でも結婚していいのか。
地下の駐車場で車を停車させた彼に念押しのつもりでもう一度問いかけた。


「・・・別に構わない・・・」

「でも・・・」

「・・・嫌なら、君の戸籍の手続きはなかったコトにする。それでもいいのか?
産まれて来る子供が君と同じ無戸籍になって、苦労するぞ」

有無も言わせない傲慢な態度。

昨日の蒼斗さんとは違い、別人のように冷たかった。

「それは困ります」

「なら、何も言わず…俺に従えっ。行くよ、桜」

「はい」

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