幻想ウエディング~人魚姫には王子様の甘いキスを~
「じゃこの子が産まれても・・・ずっとこの子のパパで居てください」
あの賀集さんですら、家族を護れなかったんだ。
俺には家族を護れる力はない。



「それは無理だ・・・」

「無理って・・・」

「・・・桜は知らないんだ。『王龍』の恐ろしさを。
ヤクザなんて非じゃないぐらい・・・アイツらは残忍で容赦がないんだ」

「蒼斗さんは『王龍』が怖いんですね」

「怖いさ。渡瀬さんの家族だって・・・殺されたんだから・・・」

「えっ?」

「渡瀬さんは金欲しさに『王龍』の末端の構成員になったんだ。
でも、俺達の潜入捜査がバレて・・・トカゲの尻尾切りにあって、殺された。
何も知らない奥さんや子供もね・・・
彼らは組織を護る為に全てを抹殺するんだ。
俺はそう言う人達を何人も見て来た。
俺と桜は今は家族だけど・・・一生神経を擦り減らして、桜と子供を護る気はない」

「今は護ってくれるね・・・」

「そうだな・・・」

「・・・でも、私以外にも貴方には両親やお姉さんだって・・・」

「今の富裕層たちは大概自分たちの身を護る為にボディガードを雇っている・・・金さえあれば、何でも出来る世の中だ。
底辺で生きる桜が一番それを分かっているだろ?」


桜は黙り込んだ。


「俺は離婚しても、桜と子供の為にお金は送金する。桜は俺に従って、別れを切り出すその日まで、従順な妻に演じてくれ。
そうすれば、君と子供の一生は安泰だ」






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